ずっと趣味でヒーロー活動を続けていたサイタマは、音速のソニックとの戦いで
自分が全く世間に認知されていないことを知りひどく落ち込み、ジェノスの勧めで
一緒にヒーロー認定試験を受けました(原作版十四~十六撃目)。その結果、二人
揃ってめでたくプロヒーローになれたのですが、最高位のS級認定を受けたジェノス
に対して、サイタマは最低ランクのC級。確かに合格点70点からスレスレの71点
という成績だったので、妥当な結果だと思っていたのですが・・・。

六十七撃目でS級ヒーロー誕生の経緯が明かされました。簡単にまとめると、個人で
国が有事の際に編成する軍隊一個師団並みの戦闘力を有すると認められたヒーロー
のために設けられた別枠
というのがS級というランクです。彼らはA級ヒーローたちが
束になってやっと倒せるという推定災害レベル鬼の怪人を単独で撃破することができます。
C~A級までしか存在しなかった当時、のちのS級ヒーロー達は皆功名心が低く、あまり
積極的なヒーロー活動を行わなかったためにランキングの下位に埋もれていました。
貴重な人材の流出を恐れたヒーロー協会が、それを防ぐために特別なランクを用意した
わけです。

 ・・・というような六十七撃目の情報を参考にすると、サイタマがC級認定されたことに
違和感が生じます。まずサイタマは体力試験のほぼ全てにおいて、ヒーロー協会
認定試験の記録を大幅に更新しており、そのことから現役S級ヒーローとくらべてもより
高い水準の身体能力を持っていると認定試験の場で証明できたはずです。ヒーロー
協会関係者も「彼の肉体には神が宿っている」と述べたほど。
またC級ヒーローというのは1週間ヒーロー活動を行わなかった場合、ヒーロー名簿から
除外されてしまうということから、いくら総合成績が芳しくなかったとはいえ身体能力の
高い優秀な人材を、流出の危険があるC級にランク付けするでしょうか?最低でもB級に
認定しないとおかしいのではないかと思いますし、極端に言えばS級であったとしても
何ら問題はなかったのではないでしょうか。

 ではなぜ、サイタマはC級認定になってしまったのか?原因を考察していきます。
作中では「インチキではないか」という体力試験の成績そのものを懐疑的に見る噂が
あるようですが(原作二十九撃目など)、それだけでは説明しきれない点が多いため、
別の視点から考えてみましょう。


①S級定義の変化
 まず、なぜ素晴らしい身体能力を持ちながらS級認定されなかったのかについて。
ヒーロー活動に積極的ではないが高い戦闘力を持つ者たちのために特別に設けられた
S級。ならば体力試験の新記録を連発したサイタマがS級認定を受けても何ら不思議は
ないのですが・・・。

これはおそらく、S級認定基準が設立当初とは変わっているからだと思います。確かに
最初は戦闘力のみを基準として選ばれたヒーロー達がS級となったのですが、これは
設立の「理由」であって、以降は他のランクと同じように運営されています。B級以下と
同じく、A級で1位になればS級にランクアップすることができますし、ジェノスのように
認定試験で満点を取れば実践での戦闘を示さずとも、いきなり認定されることもあります。
またS級内でのランキングもA級以下と同様、戦闘力のみではなくヒーロー活動も加味して
つけられていると推測されます。地上最強と噂されるキングが7位にいることや、戦闘力
自体はあまり高くないであろう童帝が5位であることがその根拠です。
このように戦闘力のみが重視されたのはS級創設時のことで、現在はどれほど高い身体
能力を示しても、それだけでいきなりS級ヒーロー!ということにはならないのではないで
しょうか。認定試験で好成績を収めるか、A級で1位になる。これが現在S級に上がるため
の必須条件なのでしょう。

 余談ですが、S級ヒーローの戦闘力の基準も現在は変わっていると思われます。
シッチが「戦闘力だけならS級にも引けをとらない」と評したA級5~7位のヒーローたちは
「流水岩砕拳をあえて封印したガロウ(S級14位のタンクトップマスターにほぼ一方的に
やられる)」に全く歯が立ちませんでした。より上位でS級ヒーローアトミック侍の弟子である
三剣士たちも、推定災害レベル鬼の魔ロン毛にかなりの苦戦を強いられており、たとえ
魔ロン毛が災害レベル鬼上位の強さを持っていたと仮定しても、3人がかりで苦戦したという
状況からそれぞれがS級並の戦闘力を持っているとは考えにくいです。シッチの見る目がない
だけなのか・・・と思いましたが三剣士に関しては地獄のフブキが「アマイマスクがA級1位に
居座っているためS級に上がれない」旨の発言をしているので、やはり創設時に比べS級の
最低ラインは下がっているように思います。


②融通の利かない採点制度
 単純に「〇〇点から〇〇点は◯級」ときっちり区切られて評価されている場合です。
認定試験は「体力試験」と「筆記試験」があり、2つの総合成績で判定されます。内訳は
明かされていませんが、前提としてそれぞれ50点・50点の100点満点だったとしましょう。
サイタマの場合、体力試験でどれだけ驚異的な成績を残そうと、50点以上取ることは
できず、筆記試験で20点以上を稼がないと合格はありません。作中でジェノスが満点の
100点という成績を出していたことから、サイタマとジェノスの身体能力には膨大な差が
あるにもかかわらず、両者の体力試験の「点数」に関しては全く同じということになります。
これは試験の欠陥とも言える問題では無いでしょうか・・・。点数の上限が決まっているの
なら、ヒーロー協会が想定した範囲を大きく越える身体能力をもったものは皆同じ評価と
いうことになってしまいます。
ただ事項で述べますが、筆記試験の内容が非常に重要なものだった場合、ただ身体
能力が高いだけのヒーローを通さないための判定方法であるとも考えられます。


③サイタマの思想・能力ゆえの筆記試験低成績
 十五撃目でジェノスが言っていますが「正義感テスト」なるものも試験に含まれているよう
です。試験自体は体力と筆記の2つなので、おそらく正義感テストは筆記の方に分けられる
でしょう。さて筆記試験と聞けば学力や一般常識を問うものかとも想像できますが、そこは
あくまでヒーローになるための試験。先に述べたように正義感テストというものがあり、どういう
内容かは想像しにくいですが・・・ヒーローとしての資質を問われるのでしょう。ただ・・・この
ぼんやりとした「正義感」という言葉がクセモノ。一口に「正義」と言ってもその基準は人に
よって曖昧でしょう。しかしこれはヒーロー協会の行う試験、判断するのはヒーロー協会であり、
協会の意向に沿った正義というものが問われるのだと思います。サイタマは試験を受ける
までは趣味でヒーローを続けており、名声に固執はないもののヒーローとしての知名度が低い
のは嫌だ・・・程度の動機でヒーロー試験を受ました(推測ですが、作中から読み取れる限り)。
とくにヒーロー協会の活動内容や理念に同意しているというわけではないですし、プロヒーロー
となった後はむしろ「趣味の方が気楽でいい」と、プロであることへの執着も無いようです。
そんなサイタマの「正義感テスト」に対する回答は、ヒーロー協会の理想とするものとは
程遠かったのではないかと思います。故に、筆記試験の点数が低かったのではないか。

 またこれは完全な想像ですが、筆記試験の内容に「状況判断」のような項目があったと
したらどうでしょう。ヒーローが事件に遭遇した時、どう行動するべきか・・・例えば「ある状況で、
凶悪な強盗が人質を盾にしている。人質を安全に救出するにはどうするべきか」など。普通
なら目的の遂行のためあれこれ思案するのでしょうが、サイタマのスピードなら「正面から
突っ込んで、強盗を殴り飛ばす!」といった回答でも救出は可能なわけです。しかし回答内容
だけ見れば、あまりにも投げやりというか。そんなことできるはずないだろう!と☓をつけられて
もおかしくはないでしょう。こんな感じで、桁外れなサイタマの能力を基準に回答した結果、
サイタマにとってはごく当たり前のことが採点側からするとあまりにも常識はずれな答えだった
ために、点数がもらえなかった・・・なんてことがあったかもしれません。


④サイタマは本気を出していなかった
 十六撃目冒頭で、サイタマの体力試験の様子が描かれています。ここで注目していただき
たいのが2ページ目の「反復横跳び」。すさまじい速さで跳んでます。
反復横跳び
となりのヤングジャンプ版では、コンクリートの地面に足あとが付いているのが分かります。
これだけでも十分にすごいのですが・・・問題は四十九撃目。音速のソニックの必殺技
「十影葬」に対して繰り出された「マジ反復横跳び」です。無数の残像を生み出すとともに、
その速度により起きる衝撃波で、音速のソニックを吹き飛ばすほど。「マジ」とついている
通り、これがサイタマの全力の反復横跳びのはずです。
マジ反復横跳び
ところが体力試験では、どう見ても本気で跳んでいません。何故でしょうか?
 考えられる原因としては、全力を出すことによって周囲に被害が出ることを懸念して、
意図的にパワーをセーブしていたということです。衝撃波が起こるほどの勢いで行わ
れる反復横跳び、もし会場で披露していたら周囲がめちゃくちゃになっていたかも
しれません。同様に、他の競技においてもあえて全力を出さずに挑んでいた可能性が
あります。垂直跳びで天井に頭が突き刺さってしまったケースのように、測定が正しく
行われなかった競技もあると思われます。
 もしサイタマが周囲に構わずすべての競技において全力で挑んでいたとしたら・・・
有無をいわさぬその能力に、S級認定を受けていたかもしれません。



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 と、ここまで私なりに色々と考察してみました。上記のどれかが原因かもしれませんし、
また複数の要因があったのか、または全部間違っている・・・のかもしれません。
長文お読み頂きありがとうございました!